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逆境にひそむ利点とは・・・  -「最小オーケストラ」と「焼き豚サンド」-

 今月のテーマは、「逆境にひそむ利点を活かしての挑戦」です。
 「最小オーケストラ」と「焼き豚サンド」。
一見、何の関係性もありませんが、現下の状況の中で、「逆境にひそむ利点」を活かす共通点を持つ二つの「事例」をご紹介したいと思います。

1.日本最小のオーケストラ「山形交響楽団」

 現在、地方の交響楽団は、地方自治体の補助金の削減・見直しの中、財政的に大変危機的な状況です。
 例えば、「大阪センチュリー交響楽団」は、4億5,000万円の補助金収入がありましたが、橋下大阪府知事の財政再建計画の中、補助金の見直し対象となり、予算的に厳しい状況になっています。
 そのような地方の交響楽団の中で、最小の本拠地を持つのが「山形交響楽団・…通称:山響」です。
1972年結成ですが、東北の小さな交響楽団ゆえの慢性的な予算不足と人員不足が続き、何とか息をついているという感じでした。
 存在感は決して高くはなく、このままでは大変厳しい状況であることは、想像できると思います。
 しかし、その楽団が、現在最も注目を集めている交響楽団に変貌しています。その原動力は、「音楽監督の飯森範親氏と楽団員」の改革への取り組みでした。
 まず、2003年に、著名交響楽団の指揮者を歴任している飯森範親氏に、楽団が「まったくダメもと」で、常任指揮者をお願いしたところ、楽団も「びっくり」の「受諾」をしていただき、山形に招聘したところから始まります。
 しかし、いくら著名指揮者でも、自分の名前で集客できる時期が永遠に続く訳はないし、演奏自体は「楽団」が行います。
 そこで飯森氏はひとつだけ条件を出します。
 「僕がいくつかマニフェストを出します。それを達成する意思がお有りなら…」
 「問題から逃げずに、真正面から取り組む」ことの大切さを、条件としたのです。そこから、楽団と二人三脚による改革が始まっていきます。

 以前は、楽団がセールスに行っても「名前に山形ってついていなければ…」という声を何度も聞かされ、「田舎イメージが邪魔をしてうまくいかないのか。」ということで、楽団名から「山形」をはずすことも検討に上がったそうです。
 しかし、飯森氏の就任後、飯森氏と楽団は、「逆境を逆手に取る」「東京のまねや有名楽団のまねをしても意味がない」「山形でしか聴けない音楽を目指す」という理念のもと、「自分たちの規模だからこそ」「山形だからこそ」できる改革を実行していき、東京や近県からも固定客を確実につかんでいきます。

次にいくつかの例をご紹介します。
(1)プレトーク
 「音楽家は、サービス業である」という明確な視点から、「プレ・コンサート・トーク(プレトーク)」の実行を徹
 底する。プレトークとは、開演前に指揮者が現れて、これから演奏する楽曲の説明・作曲家のエピソードな
 どを、時にはユーモアを交え紹介すること。飯森氏が指揮をする時だけではなく、指揮者が例えどんな巨
 匠でも、外国人指揮者でも必ず行ってもらう。プレトークを「山響の名物」とする。「聴衆との距離」を縮め、
 初めてのお客様を絶対に放さない。いかに、もう一度足を運んでいただくか。いい演奏は当たり前で、それ
 にどれほどのプラスアルファ(付加価値)をつけるか。

(2)モーツァルト交響曲全曲演奏
 モーツァルトがオーケストラのために書いた交響曲は、50曲前後とされているが、曲数が多いため、普段
 耳にするのは、その3割程度である。
 この交響曲全曲を8年かけて演奏する。
 山響の規模は、モーツァルトを演奏するのに最も適した規模である強みを活かす。狭い範囲の得意技に
 「特化」する戦略である。

(3)夢づくり・さくらんぼコンサート
 山響の6月東京公演は、「夢づくり・さくらんぼコンサート」と題し、ロビーにさくらんぼをはじめ、山形の特産
 を並べ、飯森氏がプレトークでしっかりPR。
 昔、検討にあがった「山形の名前をはずす」ことの全く逆の発想で、「山形の名前を活かす」戦略。

 上記の一例は、まさに「地方の小さな交響楽団」という存在を逆手にとっての改革そのものといえます。これは、「中小企業経営」にも直結するものがあると思います。
 現在、この改革に学ぼうと山形交響楽団への「経営者ツアー」も催され、その改革の取り組みを視察すると共に、経営者層にもファン層が広がっています。

2.「土木事業」と「焼き豚サンド」

 香川県にある土木建設会社です。
 公共事業の削減と不況の波で、売上が毎年減少しつつある中、30歳代の若い社長が、「土木は続けていくが、あとひとつの事業の柱を…」という考えのもと、ひとつの事業に乗り出しました。
 理念は「地産外消」
 「地産地消」の逆で、「地元産のものを、地元のみならず、広域で販売」という意味です。
 その社長の取り組んだ事業とは「焼き豚」
香川特産の「黒豚」を、小豆島の「醤油」と「和三盆」という特産の砂糖で味付けしたたれで作った焼き豚です。「焼き豚好きが高じての商品」というレベルではなく、勤務の合間に香川大学大学院に通って、製品開発をして生み出した商品です。
 当初はネットで順調に売上を伸ばしてきました。

 ここまでの話、であれば、自分が好きでこだわりのある食べ物をネットで販売するという、特に「食」の世界では、「それほど珍しくない話」です。
 しかし、この社長が当初から考えていた「事業」とは、大手のコンビニチェーンと組んで「地産外消を事業化」することでした。
 具体的には、「地元産焼き豚」を使ってのサンドイッチ・おにぎりなどの商品を、「地産外消」をテーマとして大手のコンビニチェーンにて展開することで、現在数万食の販売に拡大しています。土木事業と焼き豚事業の二つを柱として、歩みつつあります。
 この会社の例も、「地方」「小企業」という「逆境」を跳ね除けての前進と言えるでしょう。

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 「頂きはどこにある ?」という本がベストセラーになっています。
 10年程前に「チーズはどこへ消えた ?」という大ミリオンセラーの著書であるスペンサー・ジョンソンの最新作ですが、その中で、こんな言葉があります。
image65.gif  この本で「山と谷」とは、仕事や私生活での浮き沈みを指していて、「山」が「順境」、「谷」は「逆境」を意味しています。
 今回のふたつの事例は、「逆境にひそむ利点を何とか活かし克服していこう」というところで共通していると言えます。

(参考・推薦図書) 「マエストロ、それはムリですよ…」-飯森範親と山形交響楽団の挑戦-

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