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民主党政権と「中小企業経営」  - 金融と税制の面から -

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 民主党政権への政権交代から2ヶ月が経ちました。

 民主党は、「マニフェスト」を着実に行うことを明確にしています。その実行のための予算の概算要求で来年度の一般会計予算が95兆円を超える規模となり、今年度の当初予算にくらべ6兆4,900億円の増加で、このためには国債の新規発行が50兆円台にならざるを得ない「空前の状況」です。何を優先し、何を絞り込むかが今後の大きな焦点です。

 今回の総選挙において、「民主党 政権政策 Manifesto」で発表した「マニフェスト」、更には民主党政策全般の考えをまとめた「民主党政策集INDEX 2009」には、同党の考え方・方向性が書かれており、今回の予算編成の基本となっています。

 その基本路線としては、「マニフェスト」の第一項目に、「国の総予算207兆円を全面組み替え」とあり、「必要なものを増やし、そうでないものは削る。」とあります。
「必要なもの」…よく知られたものには、「子ども手当て月額2万6千円」「高速道路の無料化」「公立高校の実質無償化」などがありますが、そのためには、平成25年度には「16.8兆円」が必要であり、子ども手当てが半額支給の平成22年度でも「7.1兆円」が必要です。

 消費税を当面は上げないことを明言しており、加えて、来年度の税収は大幅な落ち込みが予想される中、「必要なもの」を実行しようとすると「削るものは何か」が問題になってきますが、「委託費や補助金などのうち6.1兆円の減額」「公共事業1.3兆円の減額」などと示されている「削るもの」について、「具体的に何を、どれだけを削っていくのか」が今後の重要論点になってきます。
「必要なもの」と「削るもの」の決定過程の中で「光の部分…給付を受けたり負担減となる層」「影の部分…負担増となる層」が如実となってきます。

 今月のかわら版は、「マニフェスト」や「民主党政策集INDEX 2009」及び政権交代後2ヶ月経った現在の具体的な政策発表において、「中小企業経営」という視点で、「金融・税制」を中心に特集していきます。

※平成21年10月20日現在の情報に基づく原稿で、かつ、税制については項目ごとに来年度の改正に入るのか、中期的な改正になるのかの時期がまだ流動的であることにご了承下さい。

1.中小企業金融

 中小企業金融に関連して次の3つがマニフェストやINDEX 2009に記載されています。

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 まず(1)に関係するところですが、亀井金融担当大臣が提唱していた「中小企業の返済猶予」が10月に「中小企業金融円滑化法案(仮称)」として概要が発表されました。その要旨は次のとおりです。

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 この制度は将来の返済へとつなげるためにも、現在、猶予が必要な資金繰りの厳しい企業の救済を目的としています。注意点としては、特に中小企業融資「返済猶予でも正常債権と見てくれるかどうか」です。
 従来は、大幅な条件変更や金利の減免等を行ったときは、3年以内に経営改善できなかったり、一定以上の金利確保がなければ「不良債権」として認定されて、銀行は多額の貸倒れ引当金を積まねばならず、追加融資も困難でした。
 この点は、昨年に、「10年以内」に経営改善をすれば、不良債権に認定しないことに改正されました。今回の「返済猶予」の場合にもどのような猶予や条件変更であれば「正常債権」として扱ってくれるかが、その後の銀行取引を考えた場合に、大変重要な点です。

 一応この点については、金融検査マニュアル及び監督指針を改正し、返済猶予や条件変更のなされた中小企業について、例えば「利払いが続いていれば不良債権扱いしない」というような条件を整える方針が示されています。

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 また、冒頭に書いたとおり、「個人保証」「連帯保証」の撤廃の検討も示されています。しかしこのことで逆に、中小企業向け融資が滞っては、元も子もないので、各金融機関に対して中小企業向け融資に対する指導監督の強化と報告公開をさせることとなっています。
 これは予想ですが、「中小企業向け融資に対する指導監督と報告公開」だけでは、広く行われている「個人保証・連帯保証」を現実的に大きく変えていくことは難しいと思われるので、その新たな裏づけとして「信用保証協会枠」の更なる拡充が必要になると思われます。

2.税制の抜本的な変更・・・「所得控除」から「給付つき税額控除」へ

 民主党の税制の考え方の中で、最も特徴的なものが、所得控除から給付税額控除給付つき税額控除への転換」です。

 政府税制調査会への鳩山首相の「諮問文」においても上位に具体的な項目としてあげられており、「子ども手当て」とともに、民主党の考え方を象徴する制度と言えます。

 従来の所得税の制度においては、「所得控除」が基本でした。「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」等々、すべて「所得控除」であり、課税所得に税率を乗じる前に「控除」するため、税率が高い人、つまり収入の高い層ほどその効果は高くなります。例えば、扶養一人38万円の控除が増えた場合、最高税率の人であれば、約19万円の減税効果になるのに対して、もともと諸控除が所得を上回っていて税金がかからない人であれば、更に控除が増えたとしても何も変わらない、つまり減税効果はゼロです。

 給付つき税額控除とは、例えば、子ども一人当たり10万円の給付つき税額控除としたら、税金を100万円払っている人は、「100万円-10万円=90万円」として「10万円分税金が安く」なります。税金を2万円払っている人は、「2万円-10万円=△8万円」となり、「税金がゼロで更に8万円の給付をする」というもので、所得の少ない人については所得控除より有利に働く税制です。(実際は、「現金給付」に優先して、年金や医療の社会保険料の納付分を相殺して、なお余りがあれば「現金給付」になると思われますが。)

 扶養控除の一部と配偶者控除を廃止して、「月額2万6千円の子ども手当」の財源とすることについても「所得控除から給付へ」の流れです。

 これ以外に、「給与所得控除について、現在青天井になっている適用所得の上限を設ける等の見直しを行う」との記述があります。現在は給与額がどんなに高くても最低「5%」は課税所得から控除している「給与所得控除」について、「上限規制をして、高所得者へ増税する」ということです。
 民主党の考え方は「高い所得層」への課税強化により、「所得の再配分」を重視していると言えます。

 このような扶養に着目した「給付つき税額控除」の他、「消費税」についても「給付つき税額控除」を取り入れる検討がなされています。

 これは、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出、つまり一年間に通常の衣食住により生活した場合の「消費税相当額」を決定し、その金額を「給付つき税額控除」しようというものです。この点は予想ですが、この税額控除も、所得税の計算上の「基礎控除=38万円」を縮小又は廃止しての導入と思われ、「所得控除から税額控除」の流れの一環です。

 例えば、非常にアバウトな金額例ですが、月に5万円、年間60万円が基礎的な消費支出とした場合、5%の消費税として3万円を「給付つき税額控除」、つまり所得税から3万円を控除し、引ききれなければ給付するということで、基礎的な消費税については、「実質免除」ができるようになります。

 お気づきだと思いますが、例え税率を上げても、この制度をとる限り、基礎的な消費税については、「実質免除」ですので、将来的な「税率引き上げ」を念頭に置いた制度であると言われています。
 消費税率の引き上げ時の対応策とすると、他に「食料品などの軽減税率」が考えられます。
 一般の消費税を引き上げるかわりに、食料品の消費税を「据え置く」又は「軽減税率や0%」にする政策です。ただ、この場合には、何をもって食料品とするのかが必ず問題となり、「嗜好品や健康食品はどうするのか?」などの疑問が必ず出てくるので、民主党としては、先ほどの「消費税の給付つき税額控除」により、将来の引き上げを模索するものと思われます。

3.中小企業減税(増税?)

  • 法人税の軽減税率を11%に引き下げ
  •  現在、資本金が1億円以下の中小法人等については、所得金額のうち、年800万円超の部分については30%、800万円以下の部分については18%の法人税率ですが、この800万円以下の部分についての18%を11%に引き下げを行います。そもそも800万円以下の所得部分のみの税率引き下げなので、法人税の減税額は「最高56万円」です。

  • いわゆる「一人オーナー会社」(特殊支配同族会社)の役員給与に対する損金不算入措置を廃止
  •  株主のうち、オーナー親族の割合が90%以上の会社において、会社所得と社長給与の合算が一定金額を超えると、社長給与のうち、「給与所得控除」となる2割前後の金額が法人税の計算上、「経費」とならない制度があります。理由は、社長の所得税を計算する上で、「給与所得控除」として控除している部分だからということです。その制度を廃止していきます。

  • 特別償却制度等の見直し
  •  「INDEX 2009」に次の記述があります。

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     租税特別措置には、「中小企業の機械等の30%特別償却又は税額控除」「試験研究費の税額控除」「医療用設備の特別償却」など、中小法人も適用しているさまざまなものがあります。これが「恒久化」されるのか「廃止」されるのかは今年又は来年の年末に示されるはずで、もちろん廃止や縮小されればその分は「増税」です。

    4.中小企業に影響のある「消費税」と「住宅ローン減税」

  • 消費税
  •  消費税については、「INDEX 2009」において、次の記述があります。

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     インボイス制度とは聞きなれない制度だと思います。消費税は、事業者が「預かった消費税」から「支払った消費税」を控除(仕入税額控除)をして、差額を国に納付します。
     現在は、この仕入税額控除をする際には、支払いの相手が消費税を納めているか否かにかかわらず、支払った総額の5%分を控除してしまいます。実際は、免税点(売上げ1,000万円)以下の事業者は、消費税の納税義務がなかったり、簡易課税選択事業者(売上げ5,000万円以下の選択事業者)は、実際の消費税の納税が預かった消費税の一部だったりするのですが、支払先がこれらに該当するか否かは関係なく、現在は支払額の5%を控除しており、「帳簿控除制度」と呼んでいます。
     インボイス制度では、実際に消費税を納税している事業者しか消費税の記載ができません。その記載金額の消費税を、支払側では控除することとなります。したがって、「免税事業者」から購入した場合には、消費税は書かれていないため、控除しようがありません。
     現行でこれを行うと大変混乱するため、免税点を大幅に引き下げをしたり、簡易課税制度を大きく見直すことが出てくると思います。
     インボイス制度に移行するためには、どこまでレジ等の改訂をする必要があるのか、事務手続きなど大幅な変更が必要となります。

  • 住宅ローン減税
  •  住宅ローン減税については、次のように記述されています。

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     住宅ローン減税は、現在は、最大500万円の控除可能となる規模の制度となっています。これについて、一般住宅関係は大幅縮減となり、バリアフリー化や省エネ住宅などに、かなり特化した制度になっていくと思われます。

     実は、満額の500万円の控除が受けられる人は、ローン残高が10年間引き続き5,000万円以上ある人かつ、所得税が50万円以上の人で、対象者は非常に限られています。実際は1年間で数万円から十数万円の控除の方が大半ですが、「住宅を建てると減税になる」というアナウンス効果は実際の金額効果以上に高いものがあったと言われています。
     ローン控除は、長く幅広く周知されていて、なじみの深い制度であり、また、住宅産業は自動車産業と並びすそ野が広い産業だけに、「一般住宅」に対しての控除や対象がどれだけ、しかも急激に縮小されるかによって、「縮小」のマイナスアナウンス効果は、小さくないのではと思われます。

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     今後、具体的な内容は政府税制調査会で議論のうえ、年末にも、「平成22年度の税制改正の骨格」及び「中期的な改正方針」が示されるものと思います。
     それぞれ、今までの発想の延長線ではない「政策」が織り込まれてきます。
     是非ご注目ください。


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