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新規性で購買意欲を刺激する!ブランディング戦略

「森 幸四郎」とはどなたですか?

 

ある日の大丸デパート。行列のしている先をたどると、見慣れないブランドのお菓子店が、ドラ焼きとカステラを売っている。一坪くらいの小さなコーナーである。和紙に墨太な文字で「森 幸四郎」と書かれ、花押が押されていた。

 カステラは、竹皮の包みに“結わいそ(ゆわいそ)で、無造作な手作り感で結わえてあった。
 ドラ焼きは、普通のドラ焼きの1.5倍くらいの大きさがあり、「森 幸四郎」と書かれた半透明の和紙で、ハンバーガーのように口が開いているパッケージに包まれていた。お菓子はいずれもが、和菓子屋で使う木製の“番重(ばんじゅう)”に入っていた。
 私の番がきた時、「森 幸四郎さんという方は、どのような方で、どちらに店舗をお持ちですか」と訊いた。2名いた店員さんの年長の方が、ちょっと戸惑った様子で、「文明堂の一番弟子の方で、今回ここに初めてお店を出しました」と言われた。私は、「あぁ」と意図が読めたので、「そうですか」と言って、ドラ焼き数個とカステラを求めた。

歴史を積み重ねることの影

 「森 幸四郎」とは、フードマイスターを受賞している職人であり、文明堂の一つのブランドなのだ。「文明堂」というブランドネーミングで出店しても、新規性に乏しい。なぜなら、「カステラ1番、デンワは2番、3時のおやつは文明堂♪」と、1900年創業から109年続く老舗である。ラジオのコマーシャルから始まり、テレビのかわいい白熊のダンスは、誰でもサブリミナルとして記憶の底にあるであろう。既に、大衆商品となり、駅でもどこでも売っていて、希少性がなくなってきている。

新規性を生み出すブランディング戦略

 誰でも入りやすいデパートの1F。手土産や個人使いを求める新幹線の乗降客、八重洲周辺のオフィス街で働くサラリーマン達で大混雑し、有名菓子店が次々に出店する都内屈指の激戦区である。
 そこで勝負するには、幼い頃から口にし耳慣れている商品では、「あ、文明堂ね。いつも食べているわ」と、新規性がなく通り過ぎて行ってしまうかも知れない。大丸で勝負するために、別ブランドとして、自社のマイスター職人「森 幸四郎」を登場させたのではないか。
 素晴らしいブランディング戦略である。

ブランドやネーミングは商品の水先案内人

 ブランドやネーミングは、見た人を「何だろう?」と惹きつけ、現場まで導かなければならない。ある意味、過酷な使命を持っている「商品の水先案内人」である。文明堂のカジュアルさと一線を画し、伝統ある技術を持った和菓子職人たちとの信頼感は見事に讓成されていた。
 お客様は、ブランド名・商品ネーミングに目を留め、心惹かれ、商品を手に取り、レジに向かう。世界を歩いてきた、舌も目も充分に肥えているお客様にモノを買っていただくために、いずれのメーカーも技術力を競い合い、商品の品質は高く、ほとんど差がない。
 食べ物、特にお菓子等の場合、「見て」「食べて」「美味しかった」となり、リピーターとなる。それは、最初の行動「見て」の部分で決定される。
 ブランドとネーミングの表現の、「最後」の核はパッケージである。和のイメージ「森 幸四郎」と、どこかに居そうな、しかし格式のあるブランド名。それに相応しい、素朴な中にも新しさを感じさせる主役のパッケージ、木箱での売り方と、見事にブランディングされている。この不況下に買いやすい一個売りであり、ギフトとしても、贈り手のプライドを満足させるお箱詰めである。

 不景気の中で次々と生まれる商品に、広告・宣伝費はかけられない。一つ一つの商品が自立し、ネーミングでパッケージコンセプトを表現し、自己宣伝するしかないのである。
 新しいブランドの展開をもって、自己確立、自己宣伝する大きな教訓を得た。

※参考書籍:「売れるネーミングの成功法則」 岩永嘉弘著 同文舘出版

浅沼経営センターグループ  副代表 浅沼 公子

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